最近気分が落ち込む、身体の不調に悩んでいるという方のなかには、うつ病を疑っている方もいるでしょう。うつ病の症状が長期間続くと、自分で命を断つという選択をするケースも珍しくないため、少しでも早く精神科や心療内科で診察や治療を開始することが重要です。
そこで、うつ病の初期症状の特徴や治療方法、うつ病に似た症状の見分け方について詳しく解説します。
目次
うつ病とは
うつ病になると、「精神的に異常をきたす」というイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。しかし、うつ病の初期症状は、精神的に不安定になるほか、身体にも変化が現れます。
身体の異常を感じた場合にも、うつ病の初期症状を疑ったほうが良いでしょう。
うつ病の初期症状
以下で紹介する症状が2週間以上継続している場合は、うつ病の可能性があるため注意が必要です。
精神的な症状
心精神的な症状として、以下の14個が挙げられます。
- 趣味を楽しめなくなった
- テレビや雑誌を見なくなった
- 人とのコミュニケーションが苦痛
- 作業のペースが上がらない
- 髪型や服装に気を使わなくなる
- 常に気分が落ち込んでいる
- 過去に起こったトラブルを思い出して憂鬱になる
- 四季の変化を感じられない
- 将来に大きな不安を抱く
- 常に急いでいるような感覚で過ごしている
- イライラしやすい
- 何が起こっても「全て自分のせい」だと思ってしまう
- 物事に集中できない
- 物事を判断できない
うつ病の初期症状が原因で、普段の生活に支障をきたす場合が多いです。例えば、会社に行きたくない、会社に行っても仕事ができなくなるなどです。
また、主婦の場合は家事ができなくなったり、趣味を楽しもうと思わなくなったりといったことが挙げられます。
疲れているときやホルモンバランスの乱れが原因で、いくつかの項目に当てはまることがあるでしょう。しかし、半数以上に当てはまる場合や、症状が長期間続いている場合には十分に注意が必要です。
また、身体に現れる初期症状にも当てはまる場合には、うつ病の初期症状を疑ったほうが良いといえます。
身体的な症状
うつ病の初期症状では、精神的な変化だけではなく身体にも不調が現れます。身体に現れるうつ病の初期症状として、以下の13個が挙げられます。
- 何も食べていないのに食欲がない
- 食事をしても美味しいと感じない
- 年齢は若いのに性欲がなくなる
- 食事をとっているのに痩せる
- 運動したわけではないのに動機や息切れがする
- 突然手が震える
- 吐き気や胃もたれ、下痢といった消化器官の症状が現れる
- 十分な睡眠を取れず朝早くに目が覚める
- 午前中は常に眠いが夕方になると目が覚める
- 体温が低いもしくは微熱の状態が続く
- すぐに疲れたり体がだるくなったりする
- 耳鳴りやめまいがする
- 周囲の生活音や大きな音が気になる
うつ病の初期症状には、眠れない、疲れやすい、食欲がなくなるといった症状のほか、動悸や息切れなどが挙げられます。さらに、頭痛や腰痛、肩こりのような「体が重い」と感じる症状が現れることも特徴です。
また、午前中は身体がだるく午後になると徐々に活動的になるという場合、うつ病が進行すると「午前中は全く身体が動かない」という状態になり、日常生活に大きな支障をきたします。
やる気が起きない、作業効率が落ちるという段階であればまだ良いですが、午前中に一切身体が動かなくなると生活が一変する可能性が高いでしょう。
うつ病の初期症状が見られる場合は、精神的な症状のほか、身体に起こる不調に関しても治療を行う必要があります。
うつ病の初期症状に似た病気に注意
趣味を楽しめなくなる、気分が落ち込むなど、うつ病の初期症状と似た症状がみられる病気もあります。例えば、うつ病ではなく適応障害やパーソナリティー障害などです。ほかにも注意すべき病気について紹介します。
認知症
認知症に関してはうつ病と誤診されるケースもあるため注意しなければなりません。憂うつな気分や意欲・興味の低下など、うつ病なのか認知症なのかをはっきりと診断するためには、問診だけではなく精密検査を行うことがあります。なお、うつ病患者は認知症にかかりやすいため、高齢者の場合はうつ病の早期発見や早期治療が非常に重要です。
脳梗塞
内臓疾患や脳の病気が原因で、うつ病に似た症状が現れるケースもあるため注意しましょう。さらに、脳梗塞になると脳の血管が詰まり脳が働かなくなるため、うつ病に似た症状が現れるケースがあります。ただし、脳梗塞が原因でうつ病に似た症状が現れている場合、上手に言葉を話せない、視界がぼやけるなどの症状も見られることが特徴です。そのため、うつ病と脳梗塞の違いについては比較的見分けやすいでしょう。
ほかにも、甲状腺の疾患が原因で初期のうつ病と同じような症状が現れるケースがあります。
年齢や持病の有無なども加味して、うつ病の初期症状なのか、内臓疾患なのかを判断しなければなりません。
依存性物質や薬の副作用
内臓疾患や脳の病気がなかったとしても、アルコールといった依存性がある物質を大量に摂取している、肝炎の治療薬を摂取しているという場合も、うつ病に似ている初期症状が見られるケースがあります。うつ病なのかどうかを判断するためには、アルコールの摂取量が多くないか、薬の副作用ではないかをチェックしましょう。
なお、うつ病の初期症状に似た症状が現れるほど依存性がある物質を大量に摂取していると、アルコール依存症といった精神疾患につながるため注意しなければなりません。
うつ病ではなくても、病院を受診・治療をしたほうが良いでしょう。また、うつ病の初期症状だと感じる場合には、病院を受診する際に飲んでいる薬についてもしっかりと伝えることが重要です。
うつ病になりやすい方の特徴
うつ病は、人に頼まれると思わず引き受けてもしまう人や、真面目な性格の人、もともと病気を患っている人がなりやすいことが特徴です。また、男女比では女性の方がうつ病になりやすく、男性のうつ病患者の2倍ともいわれています。
若い女性が発症しやすいといわれていますが、日本においては中年や高齢者の男性がうつ病になるケースも珍しくありません。理由は、仕事内容、働き方、職場環境などが影響するためです。
国内ではうつ病にかかる確率はおよそ7%とされており、毎年増加しています。一方アメリカを見てみると、うつ病発症する確率は最大で18%であり日本と比較して確率が高く、人種や国がうつ病の発症に関係しているといえるでしょう。
初期症状ではない?うつ病が進行しているときの症状
うつ病は、重症化すると常に死にたいと考えたりすぐに泣いたり、無気力になったりすることが特徴です。
ただし、すぐに泣いたり常に死にたいと考えたり、名前を呼んだり話しかけても反応しなかったりという症状は、初期症状ではなくうつ病が重症化している可能性が非常に高いです。
特に、死にたいと考えるようになると自殺をする可能性が高くなるため、すぐにうつ病の治療を行わなければなりません。家族や友人、知人でうつ病の可能性がある方が「消えたい」といったことを話している場合は、すぐに精神科や心療内科の受診を進めましょう。
うつ病は症状を緩和したり治療したりといったことが可能なため、自殺未遂をすることや実際に自分で命を絶つことは避けられるのです。
病院で治療を始めるタイミング
常に気持ちが落ち込んでいる、やる気が起きない、これまで普通にできていた仕事や作業でミスをするなど、普段の生活に支障が出ていると感じたら病院を受診しましょう。
涙が出たり気持ちが落ち込んだりといった精神的な症状は、身体的な病気と同等の辛さや痛みを感じるものです。少しでも早く病院で治療を始め、気持ちが楽になると、うつ病が重症化せずに済みます。
また、胃が痛かったり動悸や息切れがするという理由で内科を受診し、体に問題がないと判断された場合には、精神科や心療内科を受診する方法が有効です。
さいごに
うつ病とは、自律神経が乱れて感情を上手にコントロールできなくなり、精神状態が不安定になったり、精神的な不安に伴い体にも不調が現れたりする病気です。うつ症状が長期間続くと食欲がなくなったり睡眠障害を引き起こしたりと症状が悪化し、普段の生活にも大きな影響を及ぼすため注意しなければなりません。
紹介した精神的な症状と身体的な症状に当てはまる場合には、うつ病の初期症状の可能性が高いため、すぐに病院を受診しましょう。