うつ病で働きながらでも障害年金の受給はできる?徹底解説!

「うつ病だけど働いているから障害年金は受給できない」と思っている方はいませんか。

実は、働いているというだけで、障害年金の受給の対象外になることはないのです。

働いている人であっても障害年金の受給の要件に当てはまっていれば、受給できる可能性は十分にあります。

当記事では、うつ病で障害年金の受給を望んでいる人、働いているという理由から障害年金が受給できるか不安な人に向けて、障害年金の受給の可否及び受給の要件を解説します。

うつ病の人は働きながら障害年金の受給ができるのか

「うつ病と診断されているけど働いています。障害年金の受給はできますか。」という問いに対しての結論を言うと、「受給が可能な場合も十分にある」です。

「働いているから受給の対象外だ」と勘違いしている人は一定数いますが、働いているという理由だけで、障害年金が受給できなくなるという要件は無いのです。

実際に、働きながら障害年金を受給している人は数多く存在します。

以下では、どのような人が障害年金の受給ができるかを説明していきます。

そもそも、障害年金とは何か

そもそも、障害年金とはどのような制度なのかを解説します。

 障害年金とは、「病気や怪我が原因となって、生活や仕事に制限かかかっている人に向けての年金」です。

障害年金

もちろんここには、「うつ病」も含まれます。

障害年金は詳細には、「障害基礎年金(国民年金加入者)」と「障害厚生年金(厚生年金加入者)」に分けることができます。

「障害厚生年金」は、厚生年金に加入していることが条件となっていますが、受給できる範囲や金額について、「障害基礎年金」と比較して手厚く保証されている年金です。

以下の記事でわかりやすく解説しておりますので、ぜひご覧ください。

障害年金とは?うつ病で障害年金をもらうための要件をわかりやすく解説

障害年金の受給要件

それでは、障害年金を受給するためにはどのような要件が必要かを確認していきます。

障害年金の受給要件は、大きく分けて、「公的年金の加入について」「保険料の納付について」「障害認定基準について」の3つがあります。

それぞれ確認していきましょう。

「初診日」とは

最初に、障害年金の要件をよく理解するためには「初診日」の定義の理解が必要になってきます。

「初診日」とは障害の原因のなった病気及び怪我について、初めて医師の診療を受けた日を指します。

また、個別具体的な規定はいくつかあるのですが、うつ病の場合以下の点に注意をしてください。

「対象の傷病とは異なった傷病名であっても、それらが同一の傷病と判断される場合は、対象の傷病とは異なった傷病名の初診日」が対象の初診日となります。

つまり、例えば当初は「心因反応」と診断されていて、後に診断名が「うつ病」に変わった場合であっても、当初の「心因反応」についての初診日が適応されるのです。

他にも、「うつ病の症状による不眠や胃痛により、当初は内科に通院していたが、改善が見られず、その後精神科に通院を始めた」というケースの場合、内科での初診日が適応されます。

この「初診日」の定義を理解した上で、個々の要件を確認していきましょう。

「公的年金の加入」に係る要件

障害年金を受給するためには「初診日」において、国民年金または厚生年金保険の被保険者期間中であることが必要です。

しかし例外として、以下のいずれかに該当する場合はこの要件が問われません。

  • ・初診日が20歳以前にある場合
  • ・被保険者であった者で、国内在住の60歳以上65歳未満の間に初診日がある場合(老齢基礎年金を繰り上げて受給している場合を除きます)

つまり、初診日の段階で、国民年金の被保険者期間でない場合であっても、障害年金が受給できる場合もあるのです。

なお、20歳未満の段階で厚生年金へ加入している場合は、通常通り障害厚生年金が支給されます。

「保険料の納付」に係る要件

2つ目の要件として、初診日の前日において、2ヵ月前までの被保険者期間のうち、3分の2以上の期間を、納付済もしくは免除されていることが必要です(原則)。

上記を満たさない場合は特例として、以下の要件のすべてに当てはまる人も受給の要件を満たしていることになります。

  1. 初診日の前日において、初診日の2ヵ月前までの直近の1年間に保険料の未納がないこと
  2. 当該障害について、令和8年3月31日以前に初診日があること
  3. 初診日の時点で、65歳以下であること

「障害認定基準」に係る要件

3つ目の要件として、「障害認定日(初診日から1年半経過した日もしくは、その期間中に傷病が治った日)」において、以下のいずれかの等級に当てはまっている必要があります。

また、障害認定日には以下の等級に該当していなかった場合でも、それ以降に該当するようになれば、その時点から請求することができます。

 

うつ病の場合は、このような基準となっています。

1級・・高度の気分、意欲・行動の障害及び高度の思考障害の病相期があり、かつ、これが持続もしくは、頻繁に繰り返し、常時の援助が必要なもの

 

2級・・気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、かつ、これが持続、もしくは頻繁に繰り返したりするため、日常生活が著しい制限を受けるもの

 

3級・・気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、その病状は著しくないが、これが持続、もしくは繰り返し、労働が制限を受けるもの

国民年金・厚生年金保険 障害認定基準

そして、どの範囲の等級ならば、障害年金を受給できるかは、その人が国民年金加入者か、厚生年金加入者かによって異なります。

それぞれ以下で解説を行います。

障害基礎年金の場合

「初診日に国民年金の被保険者の場合」はこちらに該当します。

上記の等級の、1級もしくは2級に該当する場合のみ障害基礎年金の受給が可能です。

障害厚生年金の場合

「初診日に厚生年金の被保険者の場合」はこちらに該当します。

上記の、1級から3級(障害手当金含む)のいずれかに該当するときに障害厚生年金の受給が可能です。

また公的年金の二階建てと言われる構造により、1級及び2級の場合には、障害基礎年金に障害厚生年金分が上乗せされた支給額が支払われます。

「労働の制限」とは

「働きながらの障害年金の受給」に焦点を当てると、3級の要件である「労働の制限を受けるもの」の基準が大切になります。

「うつ病であるけれども、他の同僚と全く同じ環境で働いている」という状況だと、症状が軽いとみなされてしまう場合もあるのです。

一方で、「働いてはいるが、うつ病によって労働時間の制限がされている」や「同僚の手助けを必要としながら仕事をしなければならない」などは、「労働の制限」に該当する場合もあります。

そのため申請の際には、仕事を行う際に何かしらの制限もしくは、他の人と異なった扱いがある場合は、細かく記載を行うことが非常に大切です。

働きながら、3級はもちろん、中には2級を受給している人もいるため、働いているから受給できないという考えはせずに、自分の今の状況は障害等級のいずれかに当てはまるかどうかを、今一度検討しましょう。

「障害年金」と「障害者手帳」は別制度である

「障害年金」と「障害者手帳」は共通した制度であると理解している人も多いですが、実はこれらはそれぞれ異なった制度なのです。

障害者手帳

障害年金

「障害年金」は名前の通り年金制度です。

主に年金事務所に申請を行い(障害基礎年金の場合は市区町村役場でも可能)、決まった額の年金を受給できる制度です。

一方で、「障害者手帳」は市区町村役場に申請を行い、取得すると、医療費の助成、税金の軽減措置や、市町村独自のサービスを受けることができる制度です。

この二つで特に異なった理解をしないといけないことは、「障害等級」についてです。

「障害年金を受給するためには、障害者手帳の等級が1~3級でないといけない」と勘違いしている人がいますが、障害年金の等級と、障害者手帳の等級は全くの別物です。

障害年金の受給の際は、あくまで上記の等級の基準によって決まりますので、間違いの無いように注意しましょう。

まとめ

「うつ病だけど働いているから障害年金は受給できない」と勘違いしている人がいますが、実はそうではありません。

働いているからと言って、障害年金を受給できないという規定はなく、受給の要件に沿った判断がされます。

そのため、自分は障害年金を受給する資格があるのかどうかをしっかりと理解する必要があります。

仮に、判断に迷った際には社会保険労務士に相談することも一つの手段でしょう。

「本来受給できたのに、知識がないがために受給できなかった」ということが、万が一にも無いようにするために、障害年金に対して正しい知識を身に付けることが大切です。